コシノジュンコさん

5. コシノジュンコさんとダイアナ・ロス!?

5. コシノジュンコさんとダイアナ・ロス!?

慎太郎ところで、先生のブティックにビヨンセも買いに来るんだよね。

コシノ ビヨンセもそうなんだけど、私ね、もともとダイアナ・ロスが好きなの。シュープリームズの時代から狂っちゃって。それがネコ(金子國義)との音楽の関わりかもね。で、ダイアナ・ロスの関わりの話をしようか?凄い面白いの。もう亡くなったんだけど、須賀 勇介さんっていうヘアデザイナーがニューヨークにいたのね。ジャクリーン・ケネディとかのスタイリストをやってて、徹子さんともすごく仲がよくってね。上手なのよ。だからおばさまの凄いのがいっぱい来るわけよ。わかるでしょ、きれいだし、格好いいし。で、私がニューヨークの須賀ちゃんの店でヘアをやってもらっている時にね。「ジュンちゃん、ダイアナ・ロスは大好きでしょ?ここに来るのよ」って言うのね。いいわね、私の最高の憧れの人よって言ったわ。「じゃ今度ダイアナ・ロスが来たら、日本に行くことがあったら、ジュンちゃんのところに行くように言っとくわ」って。口が上手だから、こちらも軽くお願いねって言ってたのね。
そしたら!なんと!本当に来たの。ダイアナ・ロスがベントレーに乗って私のブティックに。その日は私が自分のファッションショーで留守をしていたの。たまたま安井かずみさんがお店に来てて、英語もできるし、かずみさんが「これからジュンコのショーを見に行くんだけど一緒に行かない?」って誘ってくれたのね。それじゃ「行きたい」ってことになって、かずみさんがそのベントレーに同乗して、来てくれることになったの。電話でね、「たいへん!これからダイアナ・ロスが来ることになったから!」って。私もびっくりしちゃったんだけど、咄嗟に、音楽は全部ダイアナ・ロスにするわ!って、マーヴィン・ゲイとダイアナ・ロスの「You Are My Everything」に変えたのよ。

慎太郎えっ!?

コシノ 当時はレコードだったから、レコードの溝になんとかうまく調整したりして、ショーをやったのよ。それでショーの後にダイアナ・ロスが楽屋に来て、「全部欲しい!」ってなったの。私もね、ケチってわけじゃないんだけど、全部あげてしまったら商売できないかなって思っちゃったのよ。時間かけて作ってるじゃない?でも靴もちょうどだし、じゃ、三分の一だけねって選んでね。

慎太郎すご〜い。

コシノ でね、ダイアナ・ロスは厚生年金ホールでコンサートだったんだけど、選んだ衣装を楽屋に届けた時、「ショーを見るでしょ?」って言われてね。でも切符なんか絶対に無いはずだし、そしたら「大丈夫、見るでしょ?」って聞くから、もちろん見たいって言ったの。

慎太郎それはそうですよね。

コシノ 楽屋ではね、今から着る洋服が全部吊ってあるの。その中のひとつに、私知ってる!というのがあったの。ニューヨークにアストリアルホテルっていうのがあって、たまたまそのホテルの前を通ったら、入り口に”ダイアナ・ロス”って書いてあってね。ほんとかな?と思ってホテルに入って行ったの。切符を買えるか見に行こうと入ったら、地下で、食事をする小さな場所。まだ入れるって言うから、切符を買ってね。5、60人の場所で、すっごい小さいステージで。屏風を立てて着替えをして。ほんとに素朴なディナーショーだった。そのワンマンショーをやった時に着てた、ショッキングピンクでスパンコールの衣装があったの。
そのことを彼女に言ったら、「何で知ってるの?あれ見た人はめったにいないわ」って。それで盛り上がって、そのあと、彼女のショーを見ることになるんだけど、どこで見たと思う?

慎太郎え、どこ?

コシノ どこに座るのかな、と思ったら、ステージの上に椅子を置いたの。で、もう一脚置いてあるから、誰が座るのかなと思ってたら、ディオンヌ・ワーウィックだったの。で、私のことを”友だち”って紹介してくれて。ディオンヌは友だちだろうけど、私も友だちだって…。

慎太郎信じられない!今からショーをするステージの上で、でしょ?

コシノ そうそう。彼女との話は、もう一つあるの。その2年後のことね。私がパリコレをやるって言う年に、ダイアナ・ロスが武道館に来たの。私は楽屋に行って、シャツのおみやげを持っていってあげたのね。そしたら一番前のいい席をとってくれて。それで最後のアンコールの時になったんだけど、なかなか彼女が出てこなかったのね。私は次の予定があったし、まぁさっき楽屋で会ったしいいか、と思って帰ろうとしてパッと席を立って5、6歩進んだところで会場がワ〜ッ!と盛り上がって、彼女が出てきたのね。振り向いたら、なんと!さっきプレゼントしたシャツを着てステージにいたの!帰んなくてよかった〜、って思ったんだけど、私が立ったせいで目立っちゃって、「ジュンコ、カモ〜ン」ってステージの上から呼ばれて。あ、まずい、見られたと思ってね。しょうがないから階段からステージにあがったら、「このシャツどうやって着るの?」だって。それでちょっとやってあげたら、「いまからジュンココシノ ファッションショー」って。モデルウォークしながらね。感動しちゃったわ。やっぱりエンターテナーって凄いのね。金子國義もそう。エンターテナーなの。

慎太郎そうそう、周りにあるものでね。

コシノどんな場所でも、そこにあるものを使ってね。わざわざ用意してくるものではないのよね。

慎太郎ペンがあったらギュ〜ってアイライン書いて、足に網タイツを書いてましたから。

コシノ もうどれほどやったか。何でもいいのね。テーブルクロスがあったら、タ〜ッと取って。それと同じね。エンターテナーと言っても誰でもできないわよね。センスよね。パッとその時のひらめきのセンス。それがダイアナ・ロスの場合は私が対象だったのよ。おかしいよね。

慎太郎 おかしいっていうか、凄いですよ、ジュンコ先生のつながりも。金子先生も、今でも何かあったら、ジュンコ先生のことをおっしゃいますよ。大好きなんですよ。運命ですよ。

コシノ今度さ、私のことも、こういう風にインタビューして喋ってよ。面白そう。

慎太郎もちろん喜んでお話しさせてください。