コシノジュンコさん

4. コシノジュンコさんにとっての、パリと岸和田、そしてお母ちゃん。

4. コシノジュンコさんにとっての、パリと岸和田、そしてお母ちゃん。

慎太郎私は先生にいろんな昔話を伺いたくて。それがもう楽しくて楽しくて。

コシノ 昔話っていうより、日本の一番いい出発点の時ですよね。私はビートルズを境界線にして、日本のインターナショナルが始まったと思うの。それまで外国人って知らなかったから、音楽とか映画とか、外国のものに触れる最初でしょ。オリンピックが初めて日本にきて、少しあとにビートルズが日本に来たんだもんね。四人揃ってね。そのあたりから、日本の何か面白い職業、文化など、それまでバラバラに動いてたものが、ひとまとめになったような感じ。日本独特のものを創り出すような…。私はファッションだから、当然外国、パリ。ニューヨークでもなく、ロンドンでもなく、パリなのよね。で、パリは何?っていうと、オートクチュールでしょ。オートクチュールって貴族の世界じゃないですか。セレブ、トップの人たちがお客さまでしょ。電車も乗ったことないような人ばっかり。そういう人たちを相手にしてね。

慎太郎そうなんだ。

コシノ 初めてフランスに行ったとき、自分の思っているパリじゃなかったのよ。最初に着いたのが北駅だったのね。ベルギーから入って。そんときはね、「なんだここ、上野じゃないの?」って思った。綺麗な格好の人もどうしようもない人も一緒なのよ。もちろん、パリの真ん中はやっぱり違うんだけどね。あとね、フランス人は全員がファッションのセンスがいいわけじゃないって思った。一部のモードの関係者は神経質だけどね。でも日常にセンスがあるの。それは何かっていうとね、八百屋さんに例えると、果物の並べ方のセンスがいいのよ。アートね、す〜ごいの。それが歴史とか伝統かもしれない。日本の八百屋さんを思い出してみて。道の真ん中まで商品を段ボールのままバ〜っと出してさ。そんなのパリのどこにもないわ。もう果物や野菜をピッカピカに磨いて、色分けして、きれいに積んであって。一個買ったら悪いんじゃない?って思うくらい美しいのよ。それがパリだと思うの。歩いている人を見ても、あまり格好つけない、さりげないのがモードなのよ。それがパリ、こだわりっていうのかな。自分を持ってる人。日本人って自分を持ってる人が少ないのよね。

慎太郎岸和田は日本じゃなかったのね。

コシノ 大阪のど真ん中に生まれてたら、それはそれで満足してたかもね。でも私は岸和田っていう地方に生まれてるから、はみ出たわけ。東京に対抗して「私たちも!」って。大阪までは電車で行けるけど、東京までは遠い。思い切って、東京か外国なの。今は外国が普通だけど、当時は東京だったわ。いっそのこと東京飛ばして外国へ、っていう人もいる。だからね、外国で会う人って、意外と和歌山の人とか、都会の人じゃないの。どっか地方のね、そういう人がちょっと背伸びして、やっと到達した!というギャップがあるからいいんじゃないかな。

慎太郎なるほどね。関西人は元気なのね。

コシノ もともと関西は元気なはずなのに、最近は大阪行くと元気そうに見えない時がある。大阪をもっと元気にしてとかよく言われるけど、大阪の人たちはどうなちゃったの?って思うの。

慎太郎 でも先生に元気にしてって言われてもね。先生が頑張ってくださったとしても、やっぱり元気になる気じゃないと。

コシノ みんなで元気になりましょ!って言って元気にならないから、一人の元気が二人になって、二人が四人になればいいことだから。影響し合えばいいのよ。みんなでなりましょって言ったってならないわよね。違う?一人でも元気な人がいたらね。で、誰が元気かっていうと、やっぱり吉本なのよね。影響力は。うちのお母ちゃんなんか、吉本のアナ・トークとかいう学校に入って。

慎太郎えっ!?

コシノ 岸和田弁が恥ずかしくて、きれいな大阪弁に憧れてたの。で、毎週土曜日に吉本に。88歳くらいの時、いい歳よ。それで絶対休まないの。ある時、お母ちゃんが土曜日に東京にいてね、「今日絶対に帰らないと」って言うの。何しに帰るの?って聞いたら、学校があるからって。若くもないんだから一回くらい休んだっていいじゃない、今さら勉強したって…って思うでしょ。とんでもない。「自分は100まで生きるつもりだから、これからよ!」って。人生これからって、ね。それでおかしいのはね、明日日曜日だし、休めばいいのにって言ったら、「アカン!絶対に行く」って。1回や2回休んだって大したことないんだからって思ったら、「ワタシが行かんかったら、みんなのためにならへんの!」って。えっ、それで行ってんの?って聞いたら、「当たり前やないの!」って。元気づけに行ってるつもりなのよね。えらいよね。私、あれは感心したわ。私だったら休むかなと思ったけど。